大型犬の飼い主さんであれば、誰もが「よだれの量がすごい!」と思ったことがあるのではないでしょうか。暑いときなど、生理的に出ているものであれば心配ありませんが、いつも以上によだれが多い、様子がおかしいと感じたときは要注意です。
よだれが多いときの原因や考えられる病気、対処法についてご紹介します。
大型犬のよだれが多いときの原因

大型犬のよだれが多いときは、生理現象によるものや心理的なもの、病気によるものなどが考えられます。
・生理現象によるもの
ドッグフードやおやつを目の前に「まて」の指示出したとき、食べ物や飼い主さんを見つめながらダラダラとよだれを垂らすのはおなじみの光景です。消化の準備のために反射的によだれが分泌されているのです。
また、夏の暑い日や激しい運動の後には、口を開けてハァハァと早く呼吸する「パンティング」が見られ、同時にたくさんのよだれを流すことがあります。
人は汗をかくことによって体温を調節していますが、犬には足の裏や鼻先など限定した場所にしか汗腺が無いため、パンティング呼吸によって唾液を蒸発させ、気化熱を発生させて体温調節しています。
・ストレスや緊張によるもの
苦手な動物病院に行ったときやペットホテルに預けられたとき、雷や台風、近所での騒音を伴う工事など、ストレスや緊張により交感神経が優位になり、よだれが分泌されます。
ストレスを受けると、粘性の高いよだれになることが多いようです。
愛犬をチェックして
・病気によるもの
歯周病や消化器疾患、熱中症、てんかん、腎臓病、肝臓病、異物の誤飲・誤食など、様々な病気の一症状としてよだれの分泌量が増えます。
病気によってよだれが増えている場合の多くは、食欲低下や元気がなくなるなど、他の症状を伴います。日頃から愛犬の様子をよく観察し、異常に気付いたら早めに動物病院を受診しましょう。
・犬種の特徴によるもの

セントバーナードやグレートピレニーズ、ニューファンドランド、マスティフなどの超大型犬は唾液の量も多いため、正常な状態であっても垂れるほどよだれが出ることがあります。
また、ゴールデンレトリバーのような口元がたるんでいる犬や、胸の深いドーベルマン、シェパードなどの犬種もよだれが多いと言われています。
大型犬のよだれが多いときに考えられる病気

大型犬でいつもよりよだれが多くなる、垂れ流すほどよだれが出ているという状態は、様々な病気で見られます。よだれだけで犬の状態や病気を特定することは難しいので、異常を感じたら動物病院で診てもらいましょう。
- 歯周病
- 消化器疾患
- 熱中症
- てんかん
- 腎不全・肝不全
- 異物の誤飲・誤食
- 前庭疾患
考えられる代表的な病気についてご紹介していきます。
歯周病

日本では3歳以上の犬の80%異常が歯周病を患っていると言われています。歯周病が進行すると歯の根元に膿が溜まる根尖膿瘍(こんせんのうよう)になったり、下顎の骨が骨折することがあります。
また、口の問題だけでなく、歯周病菌が血流に乗って心臓や肝臓、腎臓など全身に影響を及ぼすことも。
消化器疾患
大型犬で注意すべき消化器の病気に「胃拡張胃捻転症候群」という命に関わる病気があります。
食後すぐの運動などにより、胃に大量のガスがたまり、胃がねじれてしまう病気で、緊急性の高い病気です。
ジャーマン・シェパードやドーベルマン、グレート・デーンなど、胸が深い大型犬に多く発生します。
熱中症

大型犬が熱中症になると、大量のよだれを流すほか、口の中や舌が真っ赤になっていたり、下痢や嘔吐の症状が見られます。
重症の場合にはけいれんしたり意識が無くなり、命を落としてしまうこともあるので、早急な対処が必要です。
てんかん
何らかの理由により、脳の神経細胞の興奮が過剰になり、てんかん発作が起こる病気です。
発作が起こると四つ足を突っ張るようにして身体をのけぞらせたり、ガクガクとけいれんしたり、口をくちゃくちゃさせるなどの症状が見られ、通常は数分程度でおさまります。
発作が起きたときに大きな声をかけたり身体を触ると、刺激になってさらに発作を繰り返すことがあります。周りにあるぶつかると危険なものを移動させ見守りましょう。
腎不全・肝不全
腎臓や肝臓の機能が著しく低下している場合、本来代謝されるはずの有害物質が血中に残って体内を循環し、よだれやふらつき、けいれんなどの症状がみられることがあります。
腎臓や肝臓の異常は血液検査などで発見されるので、早期発見・早期治療に務めましょう。
異物の誤飲・誤食
大型犬は口も大きいので、飼い主さんが予想していなかったものを飲み込んでしまうことがあります
犬が誤飲・誤食するとよだれが増える、嘔吐を繰り返す、下痢、食欲不振などの症状が見られ、毒性のあるものを摂取した場合には重篤な症状に陥ることもあります。
口にして欲しくないものは愛犬の届かない場所にきちんと保管しましょう。愛犬の「ちょうだい」や「まて」をきちんとしつけておくことも大切です。
前庭疾患
前庭疾患は高齢犬に多く見られる病気で、前庭神経という耳の奥にある平衡感覚を司る神経に異常が生じる病気です。
発症すると首が片側に傾く(斜頸)、目が一定のリズムで揺れる(眼振)、まっすぐ歩けない、嘔吐、食欲不振などの症状が現れます。
危険なよだれの見分け方
よだれは暑さによるものや空腹感によるものなど生理現象として見られることもありますが、注意すべきよだれとはどのようなものでしょうか。
- 大量のよだれ、垂れ流すほどのよだれ
- よだれの状態がいつもと違う
- 他の症状がある
危険なよだれの見分け方を知っておきましょう。
大量のよだれ、垂れ流すほどのよだれ
よだれが出ることは珍しくないけれど、いつもよりダラダラとよだれが出ている、よだれが止まらない、理由もなくよだれを垂らすといった場合には身体に異常があるかもしれません。
よだれの状態がいつもと違う
よだれの臭いが普段と比べて強い場合やいつもと違う臭いがするとき、よだれに血液が混ざっているときは、病気の可能性があります。
他の症状がある
よだれ以外にも食欲不振、元気がなくなる、発熱、嘔吐、下痢、けいれん、ふらつくなどの症状を伴う場合は要注意です。愛犬の様子を観察し、獣医師に的確に伝えましょう。
大型犬のよだれが多いときの対処法

大型犬のよだれが多いと感じるときの対処法をご紹介します。
原因によって対策方法も変わるので、原因と合わせてチェックしてみてくださいね。
・暑さが原因の場合
屋外で体温が上昇してよだれを垂らしているときは、涼しく風通しの良い場所に移動させて水分補給をしましょう。遊びでテンションが挙がっているときは、落ち着かせてあげることも大切です。
夏場は凍らせたペットボトルを持ち歩いたり、保冷材の入ったバンダナを首に巻くなど暑さ対策を万全にしましょう。出かける日の天気や時間帯を考えることも大切です。
犬は室内にいても夏バテや熱中症にかかる危険性があります。
エアコンや扇風機を上手に利用し、快適に過ごせるようにしましょう。
熱中症の疑いがあれば、身体を冷やす応急処置をした後、すぐに動物病院に連絡しましょう。
・ストレスや緊張が原因の場合
よだれの原因が精神的なものであった場合は特に治療を必要とせず、ストレスの対象から離れたり、環境に慣れることでよだれは減ります。
動物病院や初めて訪れるドッグランなど、愛犬が緊張しているときは飼い主さんが優しく声をかけたり、撫でたりしてリラックスさせてあげましょう。
・病気が原因の場合
病気が疑われる場合、原因となる病気をきちんと特定し、原因に合った治療を受ける必要があります
よだれが増える原因が思い当たらない場合や、食欲不振などの他の症状を伴うときには、動物病院を受診しましょう。