大型犬に長生きしてもらう秘訣は、毎日の食事と運動、そして病気の予防です。ワクチン接種は、様々な感染症から愛犬を守るために有効で、十分に効果を得るには子犬の頃からきちんとプログラム通りに接種することが重要です。
ここでは、大型犬にワクチン接種はなぜ必要なのか、ワクチンで予防できる病気の種類、ワクチン接種時の注意点について解説します。
大型犬にワクチン接種はなぜ必要?

ワクチン接種は、体の免疫のしくみを利用し、毒性を弱めたものや毒性を完全になくした病原体を犬の体内に入れて、その病原体に対する抵抗力をつけることにより感染を予防します。
大型犬にワクチン接種が必要な理由をご紹介します。
感染症から愛犬を守る
犬に接種するワクチンは、人のインフルエンザワクチンやコロナウイルスワクチンと同様100%感染を防げるわけではありませんが、万が一感染した場合、症状が軽く済みます。
ワクチンで予防できる病気には子犬が感染すると重症化しやすい病気や、死亡率が高い感染症もあるので、愛犬の健康を守るためにもワクチン接種をしましょう。
また、感染症にかかると他の子にうつしてしまうこともあるので、お出かけする子のマナーとしてもワクチン接種は大切です。
狂犬病ワクチンは義務化されている
日本では厚生労働省の「狂犬病予防法」に基づき、生後91日齢以上の犬の飼い主さんは、その犬を所有してから30日内に市町村に犬の登録をして鑑札の交付を受けるとともに、狂犬病の予防注射を犬に受けさせ、注射済票の交付を受けなければならない、という決まりがあります。
また、その後も年1回の追加接種が義務付けられています。
過去に狂犬病予防注射で重い副作用が出た場合や病気の犬などは、獣医師の判断により接種を免除されることがありますが、違反した場合には20万円以下の罰金の対象になります。
証明書の提示を求められることがある
トリミングサロンやペットホテル、ドッグランなど複数の犬が集まる場所では、必ずと言ってよいほどワクチン接種証明の提示を求められます。また、旅行など外出先で体調を崩したとき、証明書が無いと近くの動物病院で入院できないケースもあるようです。
混合ワクチンの接種証明書は動物病院で発行されるものなので、大切に保管しましょう。狂犬病ワクチンは、注射済票が注射を受けた犬であることを証明するための標識になるので、いつも首輪に付けておきましょう。
大型犬のワクチン接種で予防できる病気は?

犬型犬に接種するワクチンは大きく2種類に分けられ、先述したように法律で義務化されている「狂犬病ワクチン」と、その他飼い主さんが任意で受ける「混合ワクチン」があります。
混合ワクチンには2種〜11種類がありますが、種類が多ければ多いほどいいというわけではありません。その子が住んでいる地域や生活環境などによって推奨されるワクチンが異なるので、動物病院でよく相談しましょう。
- 狂犬病
- 犬ジステンパーウイルス感染症
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス2型感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬パラインフルエンザ感染症
- 犬コロナウイルス感染症
- 犬レプトスピラ感染症
それでは、ワクチンで予防できる病気をご紹介します。
狂犬病
狂犬病は世界各国で多く発生しており、人にも感染する人獣共通感染症です。
潜伏期間後に食欲が減退し、神経過敏になって人に咬みついたりします。その後はうつ状態になり、ほぼ100%死に至る恐ろしい病気です。
犬ジステンパーウイルス感染症
感染力が強く、死亡率も高い病気です。
発熱、目やに、膿っぽい鼻水、元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢などの症状が見られます。症状が進行すると神経系がおかされ、衰弱死してしまいます。また、回復しても麻痺などの後遺症が残る場合があります。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス1型の感染によっておこる伝染病で、感染犬の尿や唾液などの分泌物を介して経口感染します。
嘔吐や発熱、下痢、腹痛などの症状が表れますが、重篤化すると肝臓の機能不全を起こし神経症状が現れたりし、子犬が感染すると突然死することもあります。
犬アデノウイルス2型感染症
犬伝染性喉頭気管炎とも呼ばれる感染症で、咳やくしゃみなど風邪に似た症状が出ます。
単独での病原性は弱く致死率も低いと言われていますが、他のウイルスとの混合感染により重い症状が現れる場合があります。
犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルスに感染した犬の便や嘔吐物に接触したり、食器を介して感染する伝染力が強い病気です。
腸炎型と心筋型があり、腸炎型では激しい下痢や嘔吐、食欲不振、脱水、急激な衰弱などの症状が現れ、心筋型では心筋細胞に感染することで突然死してしまいます。
犬パラインフルエンザ感染症
犬パラインフルエンザ単独での感染よりも、様々なウイルスや細菌と混合感染して呼吸器症状を呈する病気として知られています。
気管や気管支、肺に炎症を起こすため激しい咳が見られます。感染犬との接触や咳、くしゃみから空気感染を起こします。
犬コロナウイルス感染症
成犬が感染した場合には比較的軽い症状で落ち着くことが多く、無症状のままで終わることも少なくありません。
しかし、子犬が感染すると嘔吐や重度の下痢、脱水など、重度の症状が表れやすい傾向にあります。感染犬の便を口にすることで感染します。
犬レプトスピラ感染症
犬のみならず、他の動物や人にも感染する人獣共通感染症です。
感染犬の尿中に病原菌が排出され、他の犬が接触することで感染します。また、ねずみは高い確率で菌を持っており、ねずみの尿も感染源になります。感染地域に住む犬は特に注意が必要です。
大型犬のワクチン接種時の注意点

大型犬にワクチンを接種するときは、次のようなことに注意しましょう。
- 妊娠している犬や体調不良の犬には接種できない
- ワクチンの前後のシャンプーは控える
- 与え慣れない食べ物は与えない
- ワクチン接種後は安静に
- 接種後は愛犬の様子を観察する
妊娠している犬や体調不良の犬には接種できない
妊娠中の犬や授乳中の犬は原則的にワクチン接種できません。
健康状態が良好な時に接種することが重要なので、元気や食欲が無いとき、いつもと様子が違う日などはワクチン接種を控えましょう。

発情中の犬も接種できない場合があるので注意しましょう。
ワクチンの前後のシャンプーは控える
シャンプーやトリミングは人が思っている以上に体力を消耗します。
ワクチン前に愛犬の体をきれいにしておきたい、と考えるかもしれませんが、犬への負担が大きくなるので、少なくてもワクチンを接種する前日のシャンプーは控えましょう。
また、ワクチン接種後も数日はシャンプーせず、安静に過ごさせましょう。
与え慣れない食べ物は与えない
予防接種の当日、普段与えていないフードやおやつは与えないようにしましょう。
接種後に嘔吐や軟便、下痢などの症状が見られた場合、それがワクチンによる服反応なのか、与え慣れない食べ物による影響なのかが分からなくなるためです。
ワクチン接種後は安静に
先述したように、ワクチン接種後は安静に過ごさせなければなりません。
散歩はなるべく短く済ませ、ドッグランでの激しい運動や興奮する遊び、旅行などのお出かけも避けましょう。
接種後は愛犬の様子を観察する
ワクチンを接種した後には、副反応が出ることがあります。
接種してから数時間から数日以内に起こりますが、多くは24時間以内に起こるので、愛犬の様子を良く観察しましょう。主な副反応は顔の腫れや嘔吐、下痢、発熱、皮膚のかゆみなどです。
また、危険な副作用として「アナフィラキシーショック」と呼ばれるものがあります。
これは急性のアレルギー反応で、命を落としてしまうこともある危険な状態です。接種後数分から30分以内に起こることが多いので、接種後はすぐに帰宅せず、しばらく様子を見ておくと安心です。
まとめ
ワクチン接種は、愛犬を伝染病から守るために有効な手段です。
ワクチンを打っていないとトリミングサロンやペットホテルを利用できなくなってしまうこともあるので、適切な時期に忘れずに接種しましょう。